日本の神話
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物語「日本武尊」(上) 五、 浮 羽 邑
■立ち読みコーナー
五、 浮 羽 邑 |
※ 実際の書籍には、ルビがついています。 |
五、 浮 羽 邑
その頃、つまり景行天皇の三十五年(西暦二八五年)の秋より冬へかけての時期、日本
武尊は兵の訓練に寧日ない日々を送っていた。兵の訓練、つまり練兵というものは、明け
ても暮れても訓練の日々というのが日常なのであり、戦場へ赴く方が非日常、つまり非常
時であるという形は、古今東西に不易の真理でもあろう。多少とも練兵を怠ると、たちま
ち実力は落ちてしまい、その回復には時間がかかるだけでなく、その弛緩した間隙を衝か
れては、どうにもならないわけである。
「わが倭の威風は西はともかく、東の方の国々の隅々にまで届いているとはいえない。そ
れで・・・・いつ稚足彦より何か要請があるやも知れぬ」
練兵に余念のない日本武尊を招いては、大足彦天皇は述べた。
「何か、そんな兆候がございますのでありますか」
と日本武尊は尋ねたが、
「結局、越国へは赴けなかった、ということである。報告が届いた」
と天皇は心配そうに述べた。
「越国へでございますか。あのあたりは北ノ海(日本海)を介しまして、出雲国との誼が
強いと聞いてございますが」
と、かたわらに控えていた吉備武彦が申し上げた。
「出雲国と・・・・。越が何かを思いちがいして、わが倭の軍勢が越へ攻め込んでくるなどと
考え、出雲へ支援を求めたとするならば、どういうこととなるか」
と大足彦天皇は、吉備武彦の方へ顔を向けては尋ねた。
「今は穏やかな出雲も・・・・わが吉備へと攻め込んでくるやも知れませぬ。出雲は土佐や熊
野とも誼を通じていますゆえ、土佐や熊野の水軍が茅渟ノ海(大阪湾の海)へ攻め寄せて
こないとも限りませぬ」
吉備武彦は真剣な表情で応えたが、
「水軍であるか・・・・」
と日本武尊は、眼の見開かれたような思いがして、呟くように述べた。陸戦のことばか
り考えていて、水軍のことなど脳裏の片隅にもなかったからである。
海のない倭で育った尊に対し、瀬戸内海の要部に位置し、内海の盟主たる吉備育ちの武
彦であってみれば、海への認識度に格段のちがいのあるのは明らかであった。それで日本
武尊は、水軍については吉備武彦に任せることとしたのである。
そんな武彦の海への関心は、単に内海だけに留まるものではなかった。内海西部を通じ
て常に流入してくる遥かな海の彼方の国、つまり海彼(単に海の彼方の外国というよりも
進んだ文明国としての外国)にあったわけである。それだけに武彦は筑紫方面の国々の動
静にも通暁していた。
この頃の筑紫方面では、二十年ほど前に建国直後の晋へ遣使した壱与の治める邪馬台国
の勢威はすでになく、その裏返しで、活力旺盛な小群雄が割拠するという状態にあったか
と思われる。というのも、翌年つまり景行天皇の三十六年(西暦二八六年)春正月、百済
は新羅へ和親修好の使いを派遣したというからである。
百済や新羅、また高句麗のよる半島が常に強い影響を受けざるをえない大陸にあっては、
六年前に江南の呉を滅ぼしては全土を制覇した晋が、その威を広めつつある時期であり、
その威は半島にも及んで平穏の気の漲る頃であってみれば、百済と新羅との間に和親修好
の機運が生まれ出るというのも自然な流れではあった。
が、和親修好とはいえ、それ自体が目的であることは当然でもあろうが、その裏には軍
事的同盟ということが秘められているというのも、明治の日英同盟を顧みるまでもなく明
らかではあろう。つまり、この場合の百済と新羅との和親修好の裏にも、それ相応の軍事
同盟的な動きがあったものかと思われる。
しかし、大陸また半島に平穏の気の浸透する気配の当時、百済新羅の軍事的同盟の対象
となるものは海の南、すなわち列島よりくる海賊的な勢力に対してであったと考えても支
障はないようである。
というのも、翌年夏四月、倭人が新羅の地に来襲しては村々を焼き払い千人を連れさっ
たといい、それより二年後の夏五月にも、倭兵が攻めてくるという情報に接した新羅では、
この来襲に備えたというからである。ここに情報とあるが、これを齎したものは和親修好
の同盟国百済であったかと思われる。
・・・つづく
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